『ノア 約束の舟』

 職業柄、一度は見ておこうと思っていたのだけれど、ようやく見る。

 

『ノア 約束の舟』ーー映画としての評判はまあ、よくはない。

 

聖書学などでいわれていることをたくさん入れ込もうとして、わけがわからなくなってしまったのだろうなというのが率直な感想。

 

ベジタリアンと肉食を知るグループの対立とか、普通に聖書を知っている人でも理解に苦しんだだろう。そのくらいディープな内容を入れようとしているのはなんとも微笑ましいのだけれども、映画の評価、脚本の妙というようなことには繫がっていない。ネタそのものがわからない人にはわからないのだからしょうがない。

 

創世記をちょっと細かく読んで、映画のシーンとの関連を列挙するという楽しみ方はある。かなり暗いけど。

 

一番おもしろかったのは「巨人族」の表現だった。Lord of the Ringだけど。

 

ノアの箱舟は映画で真面目に扱ってはいけないね。ずいぶん前に飛行機で見たのだけれど、アメリカの下院議員かなんかがノアの箱舟をつくる役割を神(たしかモーガン・フリーマンだった)から仰せつかり、人々にバカにされつつ作り上げて、最後はホワイトハウスに突っ込んで人々を救うという荒唐無稽なB級映画が楽しかった。

 

タイトルを忘れていたが、ちょっと検索したら、発見。

 

Evan Almighty エバン・オールマイティ

 

(主演のスティーブ・カレルはこの前、ウディ・アレンの『カフェ・ソサエティ』で見た。『バイス』にも出てる。ラムズフェルド役? 見そびれた。まだやってる?)

 

ハリウッドは毎年必ずクリスマスの時期に聖書関連の映画を作ることになっていたらしいのだが、最近はどうなのだろう。もちろん、すべてが日本で公開されるわけではないのだけど。

 

ノア 約束の舟 [DVD]

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「マナ」

専門用語の簡潔な定義というのはなかなか難しい。どうしても、あちこち予防線を張っているような言葉づかいになってしまう。

「マナ」とは何か。

とりあえず、二つ、別々の言葉としてあり、ひとつは聖書に出てくる不思議な食べ物。お腹をすかせたイスラエルの民に、神が天から(?)降らせたという話になっている。

もうひとつは宗教学に登場する概念。メラネシア語で「力」という意味で、人間の理解を超えた神秘的な力の源泉といったことである。

このふたつめの方を簡潔に説明するにはどうしたらいいか。

と、考えて、いろいろ見ていた。一定の評価を得ている専門書で頭を軽く混乱させてから、wikipediaなど見てみると、何となくポイントが見えてくる。順序としてはこれがいいのだろう。wikipediaを最初に見るのはやはり危ない。

別に、ここで独自の定義を披露しようというわけではない。しかし、マナが道徳と宗教と呪術の境目を見るきっかけになるというヒントは書き留めておこう。「宗教と呪術」「宗教と道徳」……このあたりの区別の仕方というのはやはり、多少、突き詰めておいた方がいいように思う。

さて、マナは「力」なのだが、英訳するときには「power」ではなく、「force」になるのだそうだ。powerは一般的に広い意味での「力」で、forceは力の中でも強制力を伴うものを言う。軍事的な力のように人力では対抗できないような圧倒的な力はforceなのだそうだ(もちろんpowerでもある)。

しかし、まあ、「フォース」といえば、「スターウォーズ」だ。「マナ」と「フォース」を並べて見ると、映画では「マナ」そのものが表現されているような気になってくる。映画のエピソード1から3は、前宗教的な段階にあるはずのマナが「宗教・呪術・道徳」を展開させる社会の中に残っている……という話としてみると、なかなかおもしろいかもしれない(ああ、やっぱり映画の話になるのか?)。

聖書の「マナ」から、「食いっぱぐれないように」と娘さんに「まな」と名づけた先輩がいたが、「力」の「まな」もなかなかいい命名理由ではなかろうか。

「フォースがともにあらんことを」

とかいって。

ベルトルッチ Bernardo Bertolucci

ベルトルッチとの相性はあまりよくない。

なのに、偶然、三本見る。まあ、偶然ではない。まとめて放送されていたのだ。

「分身」「暗殺の森」「暗殺のオペラ」

やはり限度というものはある。「分身」以外はとりあえず通常の速さで見たけど。

シェルタリング・スカイ」も「ラスト・エンペラー」もかなり前に、見るには見たが、楽しめた記憶はない。

そうだ、「ラスト・タンゴ・イン・パリ」も見た。マーロン・ブランドが出てるから。すごい映画であった。

これだけ挙げて、楽しめたのは「暗殺のオペラ」かな。原作はボルヘスの数ページの短編だとか。

ボルヘスの短篇集、もってるはずなのだが、見つからない。



暗殺の森

「暗殺のオペラ」

Last Tango in Paris

ギレルモ・デル・トロ Guillermo del Toro

ホラー映画はほとんど見ないのだ。

でも、このところ、試みに見ている。

ギレルモ・デル・トロ監督『シェイプ・オブ・ウォーター』(The Shape of Water)がアカデミー賞を取らなければそんな気にはならなかったのだが。

その受賞作を見る前に『ミミック』というのを見た。続編も見た。

まあ、ゴキブリの怪物と対決する映画……なのではあるが、上手なんだよなあ。続編は監督が違うが、暗さの撮り方が非常にいいと思う。

次は『ダーク・フェアリー』。これも湿度が高そう。

翻訳者の当事者性

パレスティナ紛争関連の翻訳本。著者は当事者、パレスティナ人。

この手の本は訳者の感情移入の加減が難しい。語の選択も変わってくる。

同意できない意見にも、同意しているものとして語を選ぶ必要がある。

訳してるわけじゃないですが。

もうすぐ、そういう本が出ます。

日本の夏

久しぶりに日本で過ごす8月。

ふとしたことで、このblogのことを思い出す。

「この暑さは世界的なもの」と天気予報は言っているが、よりにもよって、久々に日本にいる年にねえ。

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最近、関わって、面白かった本。

木庭 顕『誰のために法は生まれた』

法律の専門家が中高生と「法律とは何か」を語り合っている。

物語を読みながら、その背後で法律がどのように作用するか、しないか。

Amazonの読者書評には「思ったより難しい」などという評もあるが、参加した実在の中高生はじつに生き生きと話に参加している。